宝物 絹本著色富士曼荼羅図 保存修理

 当社宝物、国指定重要文化財「絹本著色富士曼荼羅図」は、室町時代後期に幕府の御用絵師であった狩野派の二代目狩野元信によって描かれたものであるとされており、当時の富士山信仰及び登拝の様子を描いた曼荼羅図です。また、現存する絹本曼荼羅図の中でも最も古く大変貴重なものです。

 昭和52年6月11日に国指定重要文化財となり、その後、静岡県立美術館へ寄託し、富士山信仰を語る文化財として、各地の史跡富士山(世界文化遺産富士山)関係の展覧会等に貸出・公開を行ってきました。

 指定後は修理を行うことが無かったため、近年、度重なる開披により本誌に縦折れ・亀裂を生じ全体にカビが生じるなど、保存状態が悪化していました。

 そこで、平成29年度から3カ年掛けて、絵の具の剥離止め等による劣化防止や屋根箱の新調等による保存状態の改善を目的に保存修理を実施いたします。

保存修理の概要

名称等
 重文絵画 絹本著色富士曼荼羅図

品質形状
 絹本著色.掛幅装.
  一文字風帯:白地牡丹文金襴
  中廻し:茶地卍地雲車文金襴
  総縁:萌黄地二重蔓牡丹文金襴
  軸首:金軸
  箱:外箱、杉被せ箱.中箱、黒漆塗屋郎箱(布帙付、箱書きあり)

本紙寸法
 縦180.2×横117.8㎝

保存修理期間
 平成30年2月から平成32年3月

保存修理業者
 静岡県静岡市葵区大岩1丁目4-4
 株式会社 墨仁堂
 代表取締役 山口聰太郎

修理方針

1)調査
通常の写真撮影のほかに、必要に応じて顕微鏡写真、本紙透過写真、赤外写真を撮影する。
本紙の損傷状況を記録するため損傷地図を作成する。
絵具の発色を記録するため、分光測色計にて計測する。

2)作業開始前の処置
修理前の目視観察によって確認された、絵具層の浮き上がりや画絹の亀裂、剥離には、応急的に兎膠と布海苔の混合糊を差して接着し、作業中の安全を確保する。

3)クリーニング
準備として、絵具の劣化度合と耐水性の確認テストを事前に行う。必要であれば、クリーニングの前に、絵具層の剥落止めのため、膠水溶液を塗布する。
クリーニングは、吸水紙を本紙下に敷き、本紙画面上から純水(RO(逆浸透膜)濾過システムによって精製された水)を噴霧して、下の吸水紙に水分とともに汚れを吸着させる方法をとる。
特に強い染みが見られる部分は集中して純水滴下によるクリーニングを行う。

4)剥落止め
クリーニングを行ない煤汚れを除去した後に、兎膠水溶液にて絵具の剥落止めをおこなう。

5)肌裏紙除去
肌裏紙除去には乾式肌上法を用いる。 レーヨン紙と布海苔を用いて、本紙の表打ちを行い表面の保護をした後に、少量の水を裏打紙に少しずつ与えて糊の接着を弱め、肌裏紙を繊維状に解しながら除去する。

6)補絹
本紙画絹の調査を行い、同じ糸の太さと打ち込み間隔の絵絹を、新たな補絹として用意する。用意した絵絹は電子線照射により強制劣化させて、本紙画絹の強度に合わせる。
修理前と同様の本紙寸法となるよう、本紙四辺には足し絹を行う。

7)肌裏打
肌裏紙の色味は、画面の濃淡に強い影響を与える。そのため、画面がもっとも良く見える色の裏打紙を選ぶ必要がある。数種の色味のサンプル作成し、本紙に当てて比較して色味を決定することとする。
美濃紙を、天然染料と墨にて求める色味に染色し、肌裏紙として使用する。
画面の中にできるだけ紙の継ぎ手が入らないよう、できるだけ大判の美濃紙を選ぶこととする。

8)増裏打
肌裏紙同様に画面の濃淡を整えるため、数種の色味のサンプルを当てて比較し、最も適する色味にて染色した美栖紙を使用することとする。

9)折れ伏せ
横折れ箇所には、増裏打後に折れ伏せを入れて補強する。折れ伏せを入れるべき所が、非常に多く、その際の水分による伸縮が本紙に影響を与える可能性があるため、一度仮貼りをしてから折れ伏せを入れる。

10)表具裂
表具裂、軸首はすべて新調する。
中廻し風帯:金襴
総縁:綾
軸首:金軸(社紋入り)

11)その他の裏打について
通常の表具仕立方法に則り、中裏打、総裏打と重ねていく。その際の紙の厚み、色味等は本紙と裂の状況に応じて選定する。

12)箱
太巻添軸付屋郎箱、黒漆塗台指箱を新調する。

総事業費

事業収入予算内訳(円)

科  目 平成29年度 平成30年度 平成31年度 総事業費
所有者負担額 336,168 543,569 503,891 1,383,628
文化庁補助額 1,003,000 1,628,000 1,508,000 4,139,000
静岡県補助額 334,000 543,000 503,000 1,380,000
富士宮市補助額 334,000 543,000 503,000 1,380,000
2,007,168 3,257,569 3,017,891 8,282,628

文化庁・静岡県・富士宮市からの補助を用いて修理を進めています。

保存修理実績(工程・内容)


本事業は、文化庁美術工芸品重要文化財修理事業国庫補助金の交付を受けて実施されています。
Supported by the Agency for Cultural Affairs. Government of Japan in the fiscal 2018